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閉じた瞼が作り出す淡い光のみの世界に浮かんでいた俺の意識は後頭部に振り下ろされたであろう何かの強い衝撃で強制的に情報量の多い現実世界に引き戻された。 後頭部をさすりながら目の前でノートを棒状に丸めた少女の目線を捉える。 彼女の名前は『水原 梨沙子』、俺の幼馴染だ。 「難しい顔してどったの?」 丸めたノートで肩を叩きながら『水原 梨沙子』こと、『リコ』という少女はグラスを弾いたような綺麗な響きを持った声でそう問いかける。 その問いかけに対して馬鹿正直に答えるのはあまりにも阿呆らしかったため、俺は軽く息を吸って、吐き出す言葉を準備をした。 「何でも無い、ぼーっとしてただけ。」 その返答にリコは目を丸くする。そして、「ふーん」と腑に落ちないという感じの反応を見せる。 話したところでどうにもならんしな。 疑惑の目から逃げるために俺は話題を探して考えを巡らせると丁度いい話題を見つけた。 「それより、今年の文化祭どうすんだ?」 文化祭、学生である限り必ず経験する学校行事。それは高校2年生である俺たちも当然のように通過する行事だ。 そして、学校行事の話題は目の前の人生全力少女にとって最高の餌になる。 もちろん、食いつい 「そう文化祭!!何しようかな??せっかくだし今までやったことのないことしてみたいよね!!」 間髪入れない即答だった。 本当に分かりやすい性格で誠に有難いのだが、どうやら変なスイッチを押してしまったらしい。 俺を見つめて離さない『真紅の双眸』がルビーのような輝きを放ち、一切のくすみが存在しない『白い長髪』が激しい動きに反するようにふんわりと宙を舞う。 ここで、気がついた人もいることだろう。 リコの見た目は一般的な日本人と大きく異なっている。と言っても別にハーフやクォーターというわけではない。 白子症もしくは、アルビノと言った方が馴染みがあるだろうか。 めちゃくちゃ噛み砕いて説明すると肌や髪が白くなり瞳が紅くなる病気だ。もちろん、色の度合いには個人差というものが存在するが、リコの場合、鮮明過ぎる程だ。 そんな見た目から色々苦労してきたことを俺はよく知っている。 まぁ、今となってはそんな些細なことは気にならないのだが、本人的にはそうでもないようだ。
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