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「ねぇ、聞いてる?」 弦を弾いたような不思議な響きを持つ声が耳を撫で、綺麗に整った顔が俺の視界を埋め尽くす。 夕焼けよりも赤々とした真紅の瞳にじっと覗き込まれて少し体温の上昇を感じる。 それでも、そんな動揺を感じさせないように『いつも通り』を演じる。 「うん、聞いてる聞いてる。」 「それ聞いてない時の返事。」 「バレた?」 そうおどけて見せると細腕から放たれたとは思えない鋭さの手刀が頭頂部に振り下ろされた。 やはり痛みはないものの意思表示としては絶大な効果を発揮した。 さすが人生全力少女、やる気ない勢が許せないんですね。 いつもの如く、溜息を吐こうとした瞬間、その動作を遮るように言葉が紡がれる。 「まぁ、響のことだしそんな所だろうけどね。」 呆れ果てながらも「仕方ないなぁ」とでも言うように悪戯っ子のような笑みを浮かべる。 可愛い、周囲の人間がリコをそう評価するのも、一緒にいる俺を羨む(主に男子が)のも分かるのだが、外見的特徴や可愛らしさなんてものは17年間も身近で過ごしていれば自然と慣れるもんだ。逆説的に俺にとってリコが身近にいる事がそれだけ当たり前だったということでもあるが。 「ご理解頂き恐悦至極。」 「なんか腹立つなぁ。」 そう言いながら再度、リコの手刀が俺の頭に落ちる。 軽い優しさに溢れた一撃を入れてリコはクルンと反転する。 「それと、何かあったならちゃんと相談すること。」 一方的にそれだけを告げてリコは女友達のグループの元に駆けて行った。 本当に見透せてるんじゃないだろうな、そんな風に思えるその言葉に対して胸の中で「了解」と答えて俺は机に頭を落とした。
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