プロローグ

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プロローグ

 ぼくには小さい頃から夢があった。姉の影響で少女漫画を読んで育ったため、少女漫画のような恋愛がしてみたい、という白馬の王子様が迎えに来ることを夢見る少女のような、可愛らしい夢だ。  けど小学校、中学と平凡極まりなく、運命と呼べるような出会いもなく、気づけば高校生活一年目も後半。オマケに後ろの席では学年一の秀才イケメンが、休み時間ごとに女子生徒に囲まれるという漫画の中みたいな生活をしている。正直ぼくは、後ろのイケメンくんのせいですっかりモブに格下げだ。  普通なら席替えの神様を恨むところかもしれないが、このイケメンくんを観察するのは中々に楽しい。何しろリアル少女漫画の世界。  顔を赤くして走り去る女子、放課後の告白、取り合い、牽制、調理実習で作ったクッキー。  そんな彼の前の席にいるぼくなので、ちょっとモブ男、アンタ席かわってくんない? とか言われちゃったりするかなと思ったけどそんなこともなく、割と平和。ザンネンながら、ぼくは漫画の登場人物にはなれないらしい。  そんなモブにもなれないぼくこと、酒井直哉は今……夢にまで見た光景を前にしている。日々の行動をチェックしていたかいがあった。     
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