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甘かった。甘すぎた。熱でも出したことにして休めばよかった。
早朝、檜垣くんはぼくの家の前に立っていて、迎えに来たと爽やかな笑顔でのたまった。いつから待ってたんだ気持ち悪いとも思ったけど、なんか無碍にもできなくて一緒に登校してしまった……。
そして。教室で。席についた瞬間。檜垣くんは後ろから、いきなりぼくを抱きしめた……。
ドン引きだよ。クラスメイト全員。何よりぼくが。
女子はきゃあきゃあ騒いでるし、悲鳴のような声も聞こえるし、男子は目を逸らすし。いっそ気絶したかった。
「ちょっ、なんのつもりだよ!」
「ごめん……」
檜垣くんは昨日と同じようにアッサリ引き下がって、頬を染めた。
「好きって気持ちが抑えきれなかった」
ぼく死んでいい?
うおおおお、凄い晒し者状態なんだけど! ヒソヒソされてる! 確かに少女漫画みたいだけど! いや、ここまでくるとギャグだコレ!
頬が熱い。最悪だ。檜垣くんのほうは、すでに何事もなかったように席へついて教科書の確認なんかしてる。いつもは群がる女子も今日は遠巻きに眺めているだけ。
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