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これは。確実に。僕の趣味を知っている。好きが抑えきれなかったみたいな顔してない。むしろ、これは嫌がらせでは……? きっと、少女漫画的な展開が間近で見たくて彼を利用しようとしてたことがバレたんだ。だって本当に好きだったら、こんな馬鹿な行動をとるはずがない。
あ、謝ろう、ちゃんと。こんなことが毎日続くのかと思ったら、頭がどうにかなりそうだ。もう許してくれ……。
ぼくは檜垣くんに話しかけることも、友人に助けを求めることもできず、次の休み時間が来るのをひたすら待った。
いつもは眠くなる古典の授業も、冷や汗が出まくってそれどころじゃなかった。
授業の終わりを告げる鐘が鳴ると同時、ぼくは檜垣くんの手を引いて教室を抜け出した。またヒソヒソされるだろうけど、トンでも行動されるよりは普通に逃げ出すほうがまだマシだ。
ああー。今頃色んな噂、されてんだろうなあ。
「す、少し……ゆっくり」
「あ。ごめん」
使われてない空き教室へ檜垣くんを押し込んで、ぼくも入ってようやく一息つく。
檜垣くん。息は上がってるけど、何やら嬉しそうな顔をしている。なんでだ。
はっ。もしや……また新しい嫌がらせを思いついたのでは。
「その。ゆ、許してください」
思わず敬語になってしまった。
「えっ……。オレが好きでいること、やっぱりそんなに、嫌? 涙目になるほど?」
んん……? まさか……嫌がらせ……じゃ、ない?
「こうして、二人きりになってくれたから、想いが通じたのかと思ったのに」
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