プロローグ

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 放課後、図書室、夕暮れ。眼鏡の冴えない三つ編み文学少女に壁ドンするイケメン。そして告白……。 「ごめんなさい」  えっ!? 何故!? ここはハッピーエンドでは?  文学少女は『どうして私なんか……』とか目を潤ませながら言ったりして、イケメンは『なんかじゃない、君がいいんだ』とか囁いてさ。 「どうしてか、訊いてもいいかな?」 「好きな人がいるので。あと、本を大事にしないの、よくないと思います」  確かに本棚で壁ドンしてた。うん、よくない。  いや、しかしイケメンでもふられるんだ。むしろそのほうが少女漫画っぽいかも? ふられたことなんてなさそうだし、ますます相手の娘が気になっていく……。いい、王道だ。  逃げ去る三つ編み少女、取り残されるイケメン。どうやら追いかけてはいかないらしい。  ……でも、ふふっ。本を大事にしないのよくないって。 「誰だ!」  しまった。バレた。笑いがもれてたか。地獄耳だな。  実は観察してたなんてこと、馬鹿正直に言う必要もないし、ここは何気なさを装ってごまかすのが一番。 「ごめん、本を……探してて。聞いちゃった」  出て行こうと後ろの本棚から足を踏み出すと、焦ったような声が飛んできた。 「いい。出てこないで。黙って、そこの扉から帰って」  ……これって。 「檜垣くん」     
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