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雑談をしているうちに、檜垣くんは少しずつ落ち着いてきたらしい。貸したハンカチで目元を拭って、ずずっと鼻をすすった。
泣き顔もカッコイイなんて、神様は不公平だ。ぼくもこれくらいカッコよかったなら、少女漫画みたいな恋ができたかな。
そう。結局のところぼくが平凡である限り、そういう恋をするのは難しい。少年漫画によくある、何故かモテちゃう普通の男の子になるほうがまだ可能性があるくらい。
「あの、ぼくでよかったら、協力するよ。檜垣くんカッコイイし、絶対に成就すると思うんだ。一度で諦めるべきじゃないよ」
「そ、そうかな」
「うん。それにあの娘も、好きな人がいるからなんて曖昧な断り方だ。本当にふりたかったら、恋人いるので! と言ってもおかしくはない」
「……そ、そうかも?」
案外ちょろいな、このイケメン……。
まあ、こんな感じで口先八丁宥めすかし、ぼくは檜垣くんの恋の協力者という立場を得た。
席が後ろの檜垣くん。毎日君を見ているうちに、気づけばぼくは同調してた。こんなふうだったら。これがぼくだったら。
だから。君の恋が実れば、ぼくはその目線を通して物語の主人公になれる。そんな気がした。
毎日相談に乗って。優しくして、落ち込んでたら励まして。
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