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翌朝、ラグエルはガルシア家に来てから初めて寝坊してしまった。
考え事など、柄にもないことをしたせいだ。慌てて身支度をして部屋を出ると、ルーファスが朝食を食べ始めるところだった。
――やってしまった。
ラグエルは頭を抱えた。
「申し訳ありません! すっかり寝坊してしまいました。すぐに朝の仕事をしてまいります」
「いいのよ。ルーファスと一緒に朝食をどうぞ」
ガルシア婦人が言う。
「今日はぼくが草刈をしておいたから」
ルーファスが言う。
「す、すみません。……いやぁ……すっかり寝坊を……」
決まりが悪く、同じことを繰り返すラグエルに、ガルシア婦人は微笑んだ。
「疲れが出たのでしょう。たまにはゆっくりするといいわ。朝食の後、お昼寝でもしたらいいわよ」
「そんなわけにはいきません。それに今日はお出かけの日ですから。ねえ、ルーファスさま」
「うん」
「そうだったわね。今日はどこへ行く予定なの?」
「今日は……また丘へ登るつもり」
丘と聞いてラグエルはいつかのことを思い出した。行ったことのある場所を再び巡ることは珍しくなかったが『ここで十分』と遠くを見るルーファスの横顔を思い出していた。
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