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 父と共にいざ登城すると、旅立ちに集った九代目勇者候補は八名。それに対し、用意された国家直属の随行者は二十三人だ。  十五人も選ばれないことになる。父の懸念は的中した。 「……ラグエル、気を落とすな」 「私は気落ちなどしていませんよ。父上、まだ始まったばかりではありませんか」 「だが見よ。貴族の章を付けているものばかりではないか」  しかしまだ希望はある。勇者もただ適当に選ぶわけでもないだろう。今回の候補者たちは魔法使いが多いと聞いているので気落ちするにはまだ早い。剣術に長けているラグエルは魔法使いの候補者に選ばれるかもしれないのだ。  そして一人去り、二人去り。  勇者候補からの声がかかったものが次々と退室していく。  家長として付き添っている父は控室に残るお供達を数えては頭を振るばかりだが、ラグエルはのぞみを捨てていなかった。  ――必ず、私の勇者があらわれるはずだ。  ラグエルがそう思った時だった。   「ラグエル・ベリサリオさんですか?」  目の前に、黒髪の少年が立っていた。 「……ぼくはルーファス・ノア。ガルシア家の勇者候補です。ぼくと一緒に来てくれますか?」 「――はい、喜んで。地の果てまでお供いたします」  ラグエルの視界に天使のはしごが下りて来た。  ――この方が私を世界に連れ出してくれる。ラグエルは思った。そして辺りがパッと明るくなり、世界が輝き始めたのを感じた。 「では、行きましょう」    感慨に浸る間もなく、少年は足早に出口に向かう。  慌てて追いかけながら父を振り向くと、優しい笑顔に涙を浮かべ頷いている。ラグエルは父に一礼し、雄姿を見せるように颯爽と勇者候補の後に続いた。
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