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トコトコと進み続ける勇者候補の足はついに、城の出口へと向かう。まだ剣を捧げる儀式も済ませていないのに、だ。ラグエルは非礼を承知で歩きながら話かけた。
「……あの、ガルシアさま。よろしくお願いします」
「名前で呼んでよ。どう見たって僕の方が年下でしょ。子供相手に変だよ」
「ではルーファスさま。まずはどこから行かれますか?」
「……うちに帰るよ」
まだ旅の支度が足らなかったのだろうか。たしかに彼は軽装だ。小さな疑問が浮かんだが、今のラグエルにはどんなことでも不安要素にはならない。
旅は始まった。目の前に主人となった勇者候補がいる。彼のお供ができる、それだけで心は満ち足りているのだから。
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