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2.
「あそこ。ぼくのうちだよ」
ルーファスが蔦の巻きついた平屋を指す。古めかしいが頑丈そうな家だ。いかにも受け継がれし家柄をという佇まいに、ラグエルの胸が高鳴る。
勇者は案外近くにいたものだ。ここはラグエルの家と同じ、城下町の外れだ。思ったより奥行きがある大きな構えで、脇には離れの建物がある。そこがルーファスの住まいのようだ。
ルーファスは母屋へは寄らずに離れに入るなり、
「勉強不足で申し訳ありません。ベリサリオさん、あなたの務めってなんなんですか?」
初歩的な質問しながら靴を脱ぎベッドに転がる。広い部屋だが家具は本棚とベッドしかなかった。
ひどく散らかっていて、床には石や木や、よくわからないものと本が散乱している。壁という壁一面の、窓をも塞ぐ本棚には本がびっしり詰まっていた。
見慣れぬものばかりで、つい、キョロキョロと見回してしまったが、ルーファスの問いにラグエルは居住まいを正した。
「私の務めはあなたのお供をし、お守りすることです。あなたが使命に専念するためお手伝いをさせていただきます。雑務雑用、身の回りのことなど、なんでもお任せください。こう見えて十分な訓練は積んできたつもりです。一緒に勇者の証を手に入れましょう!」
「ふーん」
意気込みを見せたラグエルに対し、ルーファスは小さくうなずいただけだ。そして、
「昨日は寝てないんだ。隣の母屋にあなたの部屋を用意してあるから自由にしててよ」
そう言い捨て、ルーファスは床についてしまった。
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