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ぶんぶんぶんぶん。
彼女は揺れていた。超揺れていた。頭が取れて飛んでいくんじゃないかってぐらい、上下左右にぶんぶんと。
クールな彼女はどこへやら。長い黒髪を振り乱し、縦横無尽に頭を振り続けている。狂気じみた動きを横目に、すぐさま隣のライバルくんに声を掛けた。
「お、おい! あれ、見ろよ!」言いながら指をさす。
「なんだよ、居眠りの次はおしゃべりかってなんだあいつ!? ロックにでも目覚めたのか?」「わかんねぇ! 今見たらああなってた!」「大丈夫かよあれ!」「いやさすがにやば」
「後ろ! うるさいぞ!」
騒ぐ俺らを見かねた教師が一喝。俺らは話すのを止める。彼女は頭を振り続ける。教師は振り向きもせず板書を書き続ける。いや振り向いて! 振り向いたら理由分かるから!
声に出して突っ込みたかったが、先生に聞こえるような大声はもう出せない。口に手を添え小声で話すことにした。
「まじでどうしたんだろうな、あいつ。ちょっと幻滅したわ」
「幻滅て。まぁでもそうだな……あ、実は新しい勉強法だったりするかもよ。俺らも試してみるか?」
「いやいやいや、あんなに頭振ってたら覚えてたこと全部吹っ飛ぶわ」
この年で赤ん坊から人生やり直すなんてごめん被りたい。
「はは、違いねえ。てかお前、幼なじみだろ? なんか知らねえの?」
「いや……まぁ最近はめっきり交流も減ったしな。全然分からん」
「ほーん、そういうもんか」
「……そういうもんだよ」
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