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「そんなん言うても、前髪ハネてんのより、マシやろ?」
「……そやけど」
クラス旗の後方、運動場のフェンスに背中を預け、莉緒はポツリとつぶやいた。
「もしかしたら、圭太先輩と踊れるかもしれへんやん……」
“圭太先輩”は、この夏の大会で引退したサッカー部の部長で、人好きする顔立ちと性格から、老若男女問わず大人気の人物だ。
サッカー部のマネージャーをしている莉緒だが、絶大なる人気を誇る先輩に話しかけることなど、到底できるはずもない。
だからこそ、全校生徒が対象となる体育祭のフォークダンスは、あこがれの先輩に近づけるチャンスなのだ。
ちょっとでもかわいく思われたい乙女心というものを察してほしい。
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