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「ヘアピンあるんやろ? 貸して」
莉緒がヘアピンを差し出せば、直人は器用に前髪を編み込む。将来、美容師を目指しているというだけあって、慣れた手つきだ。仕上げに、ハチマキを頭の上でリボンに結んだ。
「……さすが、直人! めっちゃええやん!」
「当たり前やろ」
そう言いながら、直人はどこか不機嫌な様子だ。
「なに怒っとんの?」と口を開きかけたとき、クラスメイトから名を呼ばれた。
「莉緒~! フォークダンスはじまるよ!」
わかった、と手を振り、直人の方に向き直す。
「行こ」
そう言って、莉緒はさっさとクラスメイトのもとに走って行った。その姿を見送りながら、直人は額を押さえたのだった。
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