第一章  ある日

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ル達をここに呼び寄せたのは、このソマリ猫だった。ソマリ猫と一緒にここへやっ て来た仲間たちは、みんな、すでに栄転していた。もう、成猫となってしまってい るソマリ猫に、時間は無かった。ルルは、ソマリ猫が入っている、透明なアクリル ケースの前で足を止めた。それを見たソマリ猫は、首を左右に傾げながら、ゴロン ゴロンと転がって、得意の両手顔カイカイをやった。 「かわいい。私、この猫ちゃんにする!」 「もう、決めちゃうの?」 「ははは。気が早いなあ。」 何度も練習を積んだ両手顔カイカイが、やっと認められたのだと、ソマリ猫は感無 量だった。ソマリ猫は、この中の誰を落とせば生き残れるのか、目星がついた。 「何かお探しですか?」 ヒョウ柄のきれいなお姉さんは、ピョンッとオブジェから下りると、微笑みながら ルル達に近づいてきた。 「あ、ええ、まあ。」 ルルのお父さんが曖昧に答えると、ヒョウ柄のきれいなお姉さんは、 「何かございましたら、遠慮なくおっしゃって下さい。」 と満面の笑みを浮かべた。 そしてその後に、いつまでも売れないソマリ猫を、チロリと鋭い目で見た。 (チャンスを生かせ!) (、、、、) ソマリ猫は、ヒョウ柄のきれいなお姉さんのビームに、何かを決意した。 「では、ゆっくりとご覧ください。」     
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