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「学、動くぞ」
テツは、まだ走ってる電車の中、ゆっくり動き出した。迷惑そうな乗客がテツを睨む。でも、テツに睨み返されて目を逸らしてた。
それを何人か繰り返して止まったのは、なぜか出入り口とは遠い、電車の連結部近く。
隣は知さんくらいの年かな?オシャレな服で、ふわっとしたピンクのスカートがお花みたいなお姉さん。でも、ずっと俯いて固まってる。しんどいのかな?
心配になってテツの顔を見ると、険しい表情だった。
テツは後ろを向くと、素早く無音で携帯を撮った。
次に、横のお姉さんの吊革を握る手首を掴む。
驚いたお姉さんがテツを見た。あ、やっぱり顔色悪い。
テツは、お姉さんに構わず、突然スカートの中に反対の手を突っ込んだ。
テ、テツ?!
ボクは、驚いて声が出なかったよ。
険しい顔のまま、引いたテツの手には男の手首がしっかりと握られていた。
え?
テツは両手に手首を掴んだまま、着いた駅で2人を引きずり下ろした。
お姉さんにしっかり両手で男の手首を掴ませる。
あ、この人、お姉さんに密着してた後ろの人だ!
「学、駅員呼んで」
「ワンッ!」
返事をして駅員さんを連れて来ると、テツは何も言わずに改札へ向かう。ボクは慌てて付いて行った。
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