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「…さ、帰るか」
「…ワン」
あ、話逸らした。
そう思ったけどもうやっちゃってるから、うん、って返事だけした。
早足で立ち去るテツの横を歩く。
テツを見上げて気付いた。
「ワン、ワン!」
「ん?」
吠え続けるから立ち止まったテツ。
左の口横に、青いアザと切り傷が出来てた。
切り傷からは、血が一筋流れてる。
服にジャラジャラ付いてる人もいたし、少しだけど殴り合ってたし。
テツは色白だから、余計に痛そうに見えてボクは辛い。
屈んでくれたから触れないように気を付けて、鼻でツン、って傷と青アザの横をつついた。
「ん?あぁ」
よしよし、って撫でてくれたけどそうじゃなくて。
大丈夫?って言いたかったのに。
さっと手でぞんざいに血を拭うと、何でもない風に歩いて行く。
仕方なく付いて行くけど、ボクはこんな時こそ話したいなぁ、ってもどかしいんだ。
家族が見たら、また心配するのに。
普段は静かなお父さんですら「どうした?」って声に出して聞いてくる。
お母さんは「男の子はやんちゃで困るんだから」って言いながらもせっせと手当してくれるし、知さんもテツと言い合いしながら何だかんだ心配してる。
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