5.ケンカ

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「…さ、帰るか」 「…ワン」 あ、話逸らした。 そう思ったけどもうやっちゃってるから、うん、って返事だけした。 早足で立ち去るテツの横を歩く。 テツを見上げて気付いた。 「ワン、ワン!」 「ん?」 吠え続けるから立ち止まったテツ。 左の口横に、青いアザと切り傷が出来てた。 切り傷からは、血が一筋流れてる。 服にジャラジャラ付いてる人もいたし、少しだけど殴り合ってたし。 テツは色白だから、余計に痛そうに見えてボクは辛い。 屈んでくれたから触れないように気を付けて、鼻でツン、って傷と青アザの横をつついた。 「ん?あぁ」 よしよし、って撫でてくれたけどそうじゃなくて。 大丈夫?って言いたかったのに。 さっと手でぞんざいに血を拭うと、何でもない風に歩いて行く。 仕方なく付いて行くけど、ボクはこんな時こそ話したいなぁ、ってもどかしいんだ。 家族が見たら、また心配するのに。 普段は静かなお父さんですら「どうした?」って声に出して聞いてくる。 お母さんは「男の子はやんちゃで困るんだから」って言いながらもせっせと手当してくれるし、知さんもテツと言い合いしながら何だかんだ心配してる。
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