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それでもテツは自分の事をあまり気にしてない。
自分はどうでも良いって思ってるから。
仲が悪いわけじゃないけど、兄の知さんが優秀だから出来損ないの自分は、期待も心配もされてないって思い込んでる。
誰もそんな素振りしてないし、思ってもないのに。
みんな、自分は要らないって思ってるテツを1番大事に思ってる。大事にしてないのはテツ本人だけ。
どうしたら分かってもらえるのかな?
みんなテツのこと大好きなのにね。
「あ」
雨、だ。
ぽつぽつ降り出した。
そういえば、さっきから何か暗いな、って思ってたんだよね。
テツは、きょろきょろしては、指をピッ、っていろんなところへ向けて差してる。
これが、テツの唯一の魔法。
ピッって差したものは、見えない球体に覆われて雨から守られる。
ただ水分だけ防ぐから、それ以外は素通り出来ちゃうことと、自分にはかけられないのが、不便なところ。
歩きながら、テツは次々ピッ、ってしていく。
干しっぱなしの洗濯物や置きっ放しの荷物、野良猫や傘が無くて走ってる人、傘からはみ出したリュック。
1番にボクにかけてくれるからボクは全然濡れない。
でも、テツはどんどんずぶ濡れになっていく。
きょろきょろしながらのんびり歩いてるから余計に。
そんな時のテツは、威嚇してない。
多分テツ自身は気付いてないけど、猫が遊んでる時みたいに?うーん…獲物を狙ってる時みたいに、かな?
目が丸くなってて可愛い。
本人には絶対言えないけど。
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