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「…全く、せっかく綺麗な子に産んであげたのにね?自分を大事にしない子はお仕置きしないと」
今日もありがとね、学ー、ってよしよししながら言うお母さん。お仕置き、って何だろう?痛いのかな?
『でもボク、テツ大好きだよ?だからお仕置きは止めてあげてくれない?』
テツが居なくなったのを確認して喋る。
「学は優しい子ね。お仕置き、って言ってもただの手当て。消毒するからかなり染みるでしょうけど自業自得よ」
『…そっか』
「それに、哲のことならみんな大好きよ?私は、哲だけじゃなくて知も学も大好き。もちろん、1番は高登さんだけど」
『うん!ボクもみんな大好き!』
「学は素直ね」
『テツも素直だよ?』
「そうなの?最近、家ではあまり話してくれないし。あの子、自分のことはないがしろにするから心配なのよね」
『テツはすごく優しいよ?』
「そうね。それが自分にも向けられたら良いんだけど」
『うーん…難しいね』
「そうね…」
テツは何かと自分のことを最後にしがち。
自分はどうでも良いから、って。
だからその分、ボクが気にしてあげないと、っていつも思ってるよ。
「あ、出て来た」
ガチャ、ってドアが開く音がした。
お母さんは、いたずらっぽくボクに向かって、口に人差し指を当ててシーってする。
ボクも口を噤んでコクコク頷く。
今からボクはただのわんこです。
言葉なんて喋れないよ?
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