6.魔法

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「…全く、せっかく綺麗な子に産んであげたのにね?自分を大事にしない子はお仕置きしないと」 今日もありがとね、学ー、ってよしよししながら言うお母さん。お仕置き、って何だろう?痛いのかな? 『でもボク、テツ大好きだよ?だからお仕置きは止めてあげてくれない?』 テツが居なくなったのを確認して喋る。 「学は優しい子ね。お仕置き、って言ってもただの手当て。消毒するからかなり染みるでしょうけど自業自得よ」 『…そっか』 「それに、哲のことならみんな大好きよ?私は、哲だけじゃなくて知も学も大好き。もちろん、1番は高登さんだけど」 『うん!ボクもみんな大好き!』 「学は素直ね」 『テツも素直だよ?』 「そうなの?最近、家ではあまり話してくれないし。あの子、自分のことはないがしろにするから心配なのよね」 『テツはすごく優しいよ?』 「そうね。それが自分にも向けられたら良いんだけど」 『うーん…難しいね』 「そうね…」 テツは何かと自分のことを最後にしがち。 自分はどうでも良いから、って。 だからその分、ボクが気にしてあげないと、っていつも思ってるよ。 「あ、出て来た」 ガチャ、ってドアが開く音がした。 お母さんは、いたずらっぽくボクに向かって、口に人差し指を当ててシーってする。 ボクも口を噤んでコクコク頷く。 今からボクはただのわんこです。 言葉なんて喋れないよ?
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