6.魔法

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「はい、哲。何か言うことは?」 Tシャツにジャージで出てきたテツを、向かいに正座させながらお母さんが言う。 笑顔の威圧感が凄いよ… 「…ごめん」 「本当に分かって言ってる?」 「…はい」 「ケンカするな、怪我するな」 「…はい」 「じゃないからね?」 「…は?」 やっぱり分かってないんだね、テツ。 「自分で考えて?」 笑顔のまま言ったお母さん。 「…意味分かんねぇんだけど」 ムスッとしたままボソボソ言う。 「哲」 「はい」 「お母さんは悲しいです」 「……」 テツは黙っちゃった。 自分を大事にして欲しい、ってだけだよきっと。 お母さんは、救急箱を持って来ると、正座したままのテツを手当てしていく。 「痛ってぇ!!」 「お仕置きよ」 「何の!?」 「……」 にっこり笑って流された。 「はい、終わり!」 「…ありがとう」 納得してなくてもちゃんとお礼は言うところ、ボクは好きだよ? 「良い子なのにねー?学?」 「ワンッ!」 そうだね!って返事。 「なのにって何だよ?」 「良い子は良い子なんだけど、それだけじゃダメってこと」 「はぁ?」 「みんな愛してるのよ?哲?」 「…キモっ」 ふふふって笑って救急箱をしまいに行っちゃった。
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