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「モルト君、太陽に向かって飛ぶのだ!」
風の速度で空を駆ける一行を、怪物の翼は容易く捉えようとしていた。その咆哮はもはや、遠くから追う者のそれではない。しかし……。
東の空に昇った太陽の光は紳士達を迎え、異形の翼を焼いた。螺旋の渦の中心に口を開けた闇の深部へと、怪物は落ちていったのである。
「カルバロンの遺産……いや、子供達と言うべきか」
紳士は落ちゆく黒い点が完全に周囲の黒と同化するまで、決して目を離すことなく見つめていた。
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