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花や宝石、水の雫のような形をしたランプは全て伯爵があちこちを旅して集めたもので、どれも自慢の品々だった。ランプの光を大切にするあまりに、部屋から明かりがこぼれるのを恐れ、一階と二階を繋ぐ階段を取り払って床板を打ち付けてしまったほどだ。おかげで部屋に入ろうと思ったら、外の壁をよじ登り、ひし形の大窓から入るしかなくなってしまった。
しかし、このひし形の窓もここしばらくは開けたことがない。伯爵は夕陽が部屋に差し込もうとするのを嫌って、出入りを控えるようきつく言って聞かせたのだが、窓を開けようとすると夕陽達は部屋に入り込もうとするので、結局窓も開けられなくなってしまったのだ。そんなわけで、伯爵と召し使いであるモルトラン、伯爵が階段を取り払った日にたまたま訪ねて来ていた詩人のベルドリッチは、もう五年と半月も部屋の外に出たことがなかった。
「まったく、煩くてたまったもんじゃありませんよ」
はっきりとした威勢のいい声がする。相応の美男子を想像させる声だが、それは随分と低いところから聴こえてきた。詩人のベルドリッチである。身の丈はせいぜい一メートルといったところで、彼の外見はネズミに酷似していた。
赤いストライプの入った白いスーツを身にまとい、本人は紳士のつもりだったが、黄色い蝶ネクタイと胸の赤いスカーフ、大きすぎる黒の革靴でペタペタと歩き回るその姿は一見して道化師のようでもあった。
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