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「奴等、ここ数カ月の間に随分増えたみたいだ。一族こぞってこの横町に越して来ようとでもいうんですかね? まったく、只でさえ四六時中夕暮れで明るいったりゃないんだから、お喋りな街灯どもに集会を開かれた日にゃあ、迷惑もいいとこです!」
ベルドリッチは大袈裟に頭を振った。
「まぁ、もっとも、この部屋の明るさに比べちまえば夕暮れなんぞ屁でもねぇですがね」
ベルドリッチは独り言のように吐き捨てた。
「おやおや、ベルドリッチ君。君はこの部屋が、私のランプ達の光がお好きでない?」
伯爵の問いにベルドリッチはうんざりだという表情を浮かべながら答えた。
「お好きでないかと聞かれる? この部屋を好きでないかどうか、それを聞かれるんですか?」
ベルドリッチはふふんと鼻を鳴らして続けた。
「そりゃあね、嫌いじゃないですよ。広すぎず狭すぎず、趣味のいい家具に調度品、ふかふかのソファ。そしてこのランプ! 数えきれないほどの美しいランプ! 一度訪れたらついつい長居をしちまいたくなる部屋ですが……」
ベルドリッチは突然声を張り上げた。
「五年! いや、五年と半月! もう五年以上もこの部屋に籠りっきりだ! いくら居心地が良くったってねえ、こっちゃあこんな長居をするつもりはねえんですよ!」
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