20人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
「もうすぐ陸上競技会があるんだけど……!」
「そうなんだ」
頑張ってほしいな。矢野君なら、きっと勝てると思う。
「よかったら、見に来てくれないかな……」
秋色に染まった矢野君の顔を、私は生涯忘れないと思う。
ふわりふわりと揺れるのは、コスモスの花びらだけじゃない。
私の心も彼の言葉のひとつひとつに流される。こんなにも色づく。
「……うん。行くね」
勇気を出して、答えた。声が震えた。
「もし、勝ったら……」
矢野君がじっと私を見つめて、言葉を続けた。
「高野さんに、伝えたいことがあるんだ」
最初のコメントを投稿しよう!