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これが、矢野君なんだ……と思った。
胸の奥の方が熱くなる。
どんどん鼓動が速くなる。私の体が、私の物じゃないように感じる。
「がんばれ…」
「がんばれ…!!」
「行けー!! 矢野君!!」
自分の体の中から、知らない声が出た。
こんな気持ち、こんな声の出し方、全てはじめてなんだ。
私は、彼に勝ってほしい。
隣を走るライバルと、ほとんど同じタイミングでゴールした。
結果は……
皆が電光掲示板を見つめる。
結果は、、、、。
二階席から彼と目があった。滲む景色に映るのは、目を真っ赤にした矢野君だ。
男の子は、泣かないと思っていた。
男の子に、涙は似合わないと思っていた。
それは、違った。
矢野君は、「男の子」ではなくて、「矢野君」なのだ。
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