コスモス、秋、好きな人

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「よっしゃあああ!」 彼が高くこぶしを振り上げた。 私の眼からも涙がこぼれ落ちる。 結果は、コンマ一秒差で…… 「勝ったあああ!!」 グラウンドの矢野君の声が、澄んだ空に響き渡った瞬間、彼の元に同じユニフォームを着た仲間たちが集まってくる。矢野君は、仲間たちにもみくちゃにされながら、喜んでいる。 彼の赤い目の理由は、嬉し涙のせいだったのだ。 「おめでとう」 聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声でそう呟くと、突然彼が走り出した。 気づけば、目の前に息を切らせた矢野君が立っている。 北海道中学ナンバーワンになった彼のスタートダッシュと加速速度は、先ほどよりも早かったんじゃないかな。 彼は私のいる二階席まで、走ってきてくれたのだ。 「高野さん!」 「は、はい……っ」 目の前に立つ汗だくの矢野君は、全身をこわばらせて、赤い顔をしていた。 どうしたんだろう? あまりの興奮に、熱でも出たのかな? ぼんやりとそんなことを考えている私の思考にストップをかけるように、彼がもう一度私の名を呼んだ。 「高野さん!!」 「はい!」
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