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「そうだっけ?」
「ああ。陸上部の走り込みの途中で雨が降ってきて、バス停に入ったら、美咲がいて」
「……うん」
そんなことあったっけ?
「怪我してますよ? って、絆創膏をくれたんだ」
悠斗に言われて、思い出した。
そうだ。このバス停にずぶ濡れになった男の子が飛び込んできたことがあった。
膝小僧から血が出ていて、痛そうで、可哀想で。恐る恐る絆創膏を渡したんだ。
「あと、これもよかったら……って濡れてる俺にハンドタオル出してくれたんだ。でも、俺、こんな綺麗なタオル汚しちゃいけないと思って、断ったんだ。そうしたら、美咲がすごく傷ついたような顔をして、バスに乗り込んじゃって。それから、ずっと気になってたんだ……」
「……うん」
「中三の秋に、またこの場所で美咲を見つけて、話しかけたら、めっちゃいい子で。趣味も合うし、毎日会いたい、話したいと思うようになってて。そんな風に思う子は初めてだったし。気づいたら好きになってたっていうか……」
「……うん」
「一年間、ずっと探してたから、またこの場所で見つけられて、嬉しかった」
「……うん。見つけてくれて、ありがとう」
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