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「ありがとう……これ、どこに?」
「走ってたら、飛んできた。コスモスの花びらかと思ったら、しおりだから。どこから飛んできたんだろう? と思って、少し探した」
そう言って、彼は私の本の表紙を見た。
そして、にこりと笑って言った。
「渋いね」
「……そうかな」
今はやりのライトノベル、もしくは可愛い表紙の少女小説を読んでおけばよかった……
そう思うが、時すでに遅し。
侍の広く勇ましい背中が表紙の時代小説を手にする私を見て、彼はもう一度、微笑む。
きっと、馬鹿にされるんだ。
男の子は、言葉が悪くて、いつも私をからかってくる。
小学生の時からそうだった。きっと、彼も……。
そう思う私のみにくい心に蓋をするように、彼がそっと口を開いた。
「実は、俺も好き。司馬遼太郎、いいよな」
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