ロビ三

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「お、起動したようだな。実はもう全部設定してたんだよ」 ドアを開けたのは真っ青ないかにもと言ったロボットであった。顔は真ん丸で黒点を思わせるカメラアイ、飾り程度につけてある長い切れ目が口に見える、胸には何やらボタンらしきものがいっぱい、両の腕はいかにもロボットと言ったマニピュレーターかと思ったが人間と同じ腕の形をしており指がしなやかに動いていた、足はと言うと…… 僕にとっては羨ましくなるぐらいの完全直立二足歩行だった。 前世代の介助ロボットはローラーやタイヤなどで移動をしていたのだが、とある要介護状態の老人が「やはり大地を踏みしめる足が欲しいのう、味気ない」と言った事で介助ロボットは足を持つ事になった。その開発は困難を極めた、鳥や恐竜などの前傾二足歩行や、ゼンマイ仕掛けの玩具の二足歩行では安定しないために介護・介助の場では完全直立二足歩行が求められた。 一応新世紀の初頭には完全直立二足歩行の技術は完成していたのだが、ただ歩くだけで労働に使うなどと言った実用性は無かった。結局、完全直立二足歩行ロボットが人間と共に労働が出来るようになるまでに空飛ぶ車や自動運転やホログラムや天気の操作などが先に達成されてしまった。こんな科学の結晶がいきなり我が家にやってきて僕の世話をすると言う。 「ハジメマシテ」 おいおい、科学の結晶の割には片言だな。 「は、はぁ…… よろしくお願いします」 僕は思わず敬語になってしまった。父と母親以外の人間と話すのは久しぶりだったからだ。しかし、目の前にいるこいつは人間ではない。 「ワタシハ ウルトラハイパーミラクルAI搭載介助ロボット、ロビ三トモウシマス」 小学生が遊びで適当に決めたようなAIの名前、信じられない事に本当にこの名前だ。 科学者と言うのはどこかズレてる人が多いのは本当なようだ。 「えっと、ロビ三って何? 型番?」 「ハイ、正式ニハrobizoハ頭文字ヲ取ッタダケデス。正式名称ハ……」 「いや、いい。どうせ覚えられないから」 僕は両手を振ってロビ三の話を止めた。別にこんな正式名称など知ってもどうしようもない。 「ソウデスカ」 ロビ三は残念そうに少し頷いた。これすらもスーパーウルトラ…… 何だっけ? のAIが成せる業だろうか。 この日から僕はロビ三の世話を受ける事になった。
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