童話館の老婆姫と見えない老王子

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―館の中― ある女がいた。 その女の頭の中には、いつも、「童話の世界」が広がっていた。 幼い頃に、母親が読み聞かせてくれた「灰かぶり姫」や、「白雪姫」の物語が、この歳になっても、頭から離れないらしい…。 とくに、「幸せに暮らしました」という、あの終わりの言葉が好きだった。 童話の世界に入れたら、どんなに幸せだろうか、 女は、自分の妄想を、一冊の絵本にした。 入れないのであれば、気持ちだけでも、と、その中へ「妄想」を閉じ込めた。 女の描いた物語は、「現実と妄想」が入り交じる。 幼稚な考えで描いた絵と文字は、深く、「答え」は存在しない。 けれども、その終わりは、いつだって「幸せ」だった。 女は、自分の描いた物語を何度も読み返していた。
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