最後の晩餐

店内はあたたかな空気に満たされていた。だれもが閉店を惜しみ、オーナーに労いの言葉をかけ、料理を味わっていた。テーブルにお皿が運ばれるまで、普段なら待ちくたびれて刺々しい気分になっていたであろう待ち時間も、店の中に渦巻くざわめきも食器がたてる耳障りな音も、低く流れるジャズの一部に感じられるほどに寛いでいた。

ささやかな夢をひっそり叶え、オーナーと店員に見送られて店を後にした。
別れを名残惜しむ宴はまだ続いている。
過ごしてきた時間と、失った時間。
さらば、青春の一頁。さらば、まだ見ぬ者よ。