10話 鍛冶屋 ワーグ

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 ハンマーで何度も叩き不純物を取り除き炭素量を均一化させていく技術、焼入れの際の窯の温度と時間、焼戻しの際の窯の温度と時間、剣の場合は刃の部分は硬い鋼、芯は軟らかい鋼の2種類の鋼を使用する方法を『理力眼』によって全て取得した。  ワーグは、ロランはまだ体力がないためハンマーで叩く工程は今は無理だと思い、焼入れの窯の最適な温度の炎の色と時間を見極められるか試したところ、ロランは最適な温度の炎の色と時間を指摘した。  これにはワーグも大変驚いた。どんな優秀なドワーフであっても最初から最適な温度の炎の色と時間を指摘することは出来ず、膨大な武具の製作の繰り返しの中で感覚として身に付けていくからだ。  しかも、ロランはワーグが製作していた脛当て(すねあて)(パウレイン)と膝当て(ひざあて)(グリープ)を腕時計のメタルバンドを簡略化させた構造にすることで、長さ調節が可能となり、使用者の足の長さにフィットできるとともに一体化できること。  グリープは膝から外れないよう膝当ての左から膝裏を経由して膝の内側で、ベルト固定することにより足の可動域を損なわない装備に改善できることを指摘した。  後日談となるが、このロランのアイデアをワーグは1ヶ月間試行錯誤して完成させ、ワーグ・ロランの連名で特許を取得こととなる。  こうして、お互いの才能に惹かれ(ひかれ)合ったロランとワーグの長きに渡る付き合いが始まったのである。
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