封印した想い

１０年目の事実

「もう、先生じゃないよ。甲斐さん」

「あ…井守さん…」

変わらない笑顔に、亜夜は恥ずかしくなり俯いてしまう。

「あはは、１０年振りに会ったのに。甲斐さんは相変わらず恥ずかしがり屋だな？」

「あ、いや…あまり変わってなくて…驚いただけで…」

「え？俺が変わってない？いやいや、もう歳を取ったなと実感してるよ」

容姿は変わってないけど、顔に少しシワが付いたのが１０年の歳月を物語っていた…

「アヤ、マユとコウが今になってご結婚とは、意外だな…もっと早くすると思ってたけどな…」

「そう思いますよね！コウが遊び回っていたから、マユもキレて別れてお見合いをする！と言い出したら…コウも慌てたらしくマユに泣きついてプロポーズしたですって！」

「うわ、女って怖いな」

井守と笑い合っていた亜夜は気持ちが軽くなっているのに気付いた…

「あ、あの…井守さ」

「イモリと呼んでくれる？」

さん付けで呼ぼうとする亜夜に、井守は手を挙げてあだ名で呼ぶよう促した。