未開封の手紙

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「初めまして。XX女子大学四年の橋場 亜由美です。一ヶ月間と短いですが、精一杯がんばりますので宜しくお願いします」 実習生が自己紹介を終えたあと、主任と一緒に光夫の席に来る。 「橋場君、彼が実習担当の藤井先生です。彼から色々教えてもらうように」 「初めまして、藤井 光夫です。一ヶ月間、実習を担当しますが、わからないことがあれば遠慮なく言ってくださいね」 「はい。よろしくお願いします」 彼女は笑顔で頭を下げてきたが、光夫は小さく頷くだけで彼女の顔をジッと見つめる。 「あ、あの…あたしの顔に、何かが付いています?」 「あ、いや…昔の教え子と似てるような気がして…あ、すみません。気になさらないでください」 「藤井先生、教え子と似てました?あたしと?」 「うーん…もう6年前で、まだ中学生でしたけど…あ、いや…橋場さんとは関係ないですし。今の話は忘れてください」 目元と鼻筋が似てるなと思ったけど、不思議そうに頭を傾げる彼女に、光夫は慌てて人違いでしたと上手く誤魔化した。
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