忘れないで約束を…

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一方、樹も亜純の綺麗な横顔を見惚れつつも、問診に集中していたが、心の奥深くまで棲みついてしまった傷を取り除くのは容易でないなと思っていた。 「松久保さんの異性に対する恐怖は取り除くのは難しいそうね…」 「はい…父以外は怖くて近寄れません…あ、父も肩に手を触れられるだけで身震いしてしまいます」 「あら、相当な重症ね…」 自分の実父さえ触れるだけで拒絶反応をしてしまうという亜純に、樹は表情を曇らせる。 「あたしは専門でないから治療は難しいわ。あたしの知り合いに訊いてみるわ。ケアのプロが近くにいるかどうかをね。あ、勿論女性だから!」 ケア専門家を探してあげようか、と云うと、表情を強張らせる亜純に慌てて女性のね、と樹は付け加える。 下校時間になり、父の再婚相手に迎えに来てもらった亜純の姿が見えなくなると樹はハア、と溜息を吐いた。 ー あたしのこと、頼ってくれたら…どんなに嬉しいだろうな…
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