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男は腕時計を見た。
クリスマスという地球の行事で、愛香から誕生日プレゼントとして貰ったものだ。
適当に決めた誕生日がクリスマスだった。誕生日とクリスマスが一緒だからプレゼントを奮発したんだと彼女は言っていた。
地球から遠く離れた星に住む彼らの種族は、時計がなくても時がわかる。時計を使うのはボケた老人くらいだ。
けれど、男は腕時計を身につけていた。
嬉しい。
時計を見れば、いつでも自分に心があるのがわかった。
前の自分であれば、心など邪魔なものでしかないと思っていた。
今は違った。
心はとても暖かくて、癒される。
寂しくても、それが愛しい。
「サヨナラ、桜を見る君」
男はこの仕事の最後の記録を残す作業を始めて、記憶を胸の奥にしまった。
~終~
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