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サヨナラ、桜を見る君。
新学期初日、高校二年生になったばかりの愛香は、校舎のすぐ側に咲く桜の花を窓際の席から眺めていた。
毎年春に、ここぞとばかりに咲き誇る。そうして瞬く間に散っていく。
儚い美しさだけど、何回見ても桜は飽きない。
ぼうっとしていたら、愛香の前の席に男の子が座った。
特に気にしないで桜を見ていたら、突然その人に声をかけられた。
「桜が好きなの?」
「え?……うん。好きだよ」
「だからずっと見てるんだね」
「んー、まぁ見てて飽きないよ、桜は。すぐ散っちゃうから、いまのうちに見ておかないと」
「へぇ、そうなんだ」
まるで知らなかったとでも言う風に聞こえた。少し変わった人だなと愛香は思った。
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