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拓人はこの頃よく、スマホで誰かと連絡をとりあっていた。
ある時、学校で拓人が見知らぬ男の子と話し込んでいるのを見かけた。
こっそり近づいてみたけれど、話はよく聞こえなかった。
でも、一瞬だけ拓人の言葉が聞こえた。
「――を奪われたんだ。想定外の事態だ」
一体なんの事だかさっぱり分からなかった愛香は、その日の帰り道、2人きりになった時を見計らって、拓人に聞きいてみた。
「拓人さぁ、私に何か隠してることない?」
拓斗は愛香の顔を一度見て、バツの悪そうに向こうを向いた。
「別に……ない」
明らかに怪しい。けれど深くは聞かないでおこうと思った。
「そう。言いたくないならいいけど」
2人の間に珍しく気まずい空気が流れた。
無言のまま少し歩いた後、拓斗が口を開いた。
「いや、やっぱりある。ちゃんと言うよ」
拓人は立ち止まった。
愛香もつられて立ち止まった。
拓人はいつになく真剣なまなざしで愛香を見た。
見つめられて、どくん、と胸が鳴った。
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