サヨナラ、桜を見る君。

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遥か遠く、地球から離れた宇宙のどこか。 一つの小さな銀色の船が漂っていた。 その船には2人の男が乗っていた。 2人は地球上にない言語で何かを話していた。 その内容は以下のようなものだった。 「タクト、あれで良かったのか?」 水色の髪の男は言った。 「その名前で呼ぶな。ああするしかなかった」 タクトと呼ばれた男は銀色の髪と深い海の底のような色の瞳を持っていた。 「それにしても、上層部に地球の侵略は不可能でした、なぁんて報告したらクビになりそうだな」 「そうならないように、他で成果を上げる。もっと使える星を探す」 水色髪の男は肩をすくめた。 「あーあ。まさか俺らの中で最も冷徹で賢いお前が、地球の女に心を奪われるとはな」 「……だから危険だと判断した。あの星は侵略など無謀だ」 銀髪の男は無表情で言い張った。 「お前、地球がどうのって言うより愛香ちゃんのこと庇ってるだろ」 「……」 「別に俺はお前の味方だし、お前がそうしたいならいいんじゃねぇの?」 「いつから俺の味方になった」 「さぁね。もしかしたら、あの星で俺も気づいちまったのかも知んねぇな。ま、お前ほどじゃないけど」 「……黙れ」 「冷た。俺にも愛香ちゃん達の時みたいに優しくしてくれないの?」 「お前にやる優しさなど持ち合わせていない」 「はぁ……そうかよ。俺、腹減ったから飯食ってくるわ。そういうことで操縦よろしく」 水色髪の男は部屋の奥へと消えた。
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