3.個室での食事

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妻が亡くなって一人で娘を育てるのに、ここは会社までの通勤時間が短いので、郊外にあった自宅を売って買い替えた。いや、妻との思い出がいっぱいの家に住み続けたくなかったからでもあった。 ここへ引越ししてくるときに、使っていた家具はすべて処分して買い直した。家電製品はそのまま持ってきたが、今ではほとんど買い直した。 妻の思い出から逃れようとしていた半面、妻に生き写しの凜に惹かれて、4年もの間、逢瀬を重ねた。 あの時、凛に「あなたの奥さんの代わりだったの?」と聞かれたときに、「そうだったかもしれないし、そうじゃなかったかもしれない」と答えたのは本心からで、自分でも良く分かっていないと思った。それを確かめるために、また日曜日に誘ってどこか行こう。
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