4.箱根への旅(1)

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都内で自分のような中年の男が女性と一緒に行けるところで、人も多くないところを選ぶのは難しい。それでも出張などで日曜日がつぶれない限り、凜を誘って出かけては食事をした。 食事は個室のあるところを選んだ。凜は必ず付き合ってくれた。今度の日曜日と月曜日は連休となるので凛を一泊旅行に誘ってみようと思った。携帯に連絡を入れる。 「今度の連休だけど、日曜日に出かけて一泊して月曜日に帰ってくる旅行へ行かないか?」 「休日の夜は店を開けないのでかまいません」 「どこがいい?」 「おまかせしますが」 「じゃあ。無難なところで箱根でも当ってみるよ。予約がとれたら、待ち合わせ時間と場所などをメールで連絡する。それと同室でいい?」 「かまいません。楽しみにしています」 ネットで調べて、芦ノ湖の湖畔のホテルを予約した。新宿から10時10分発のロマンスカーで箱根湯本に入る予定で、改札口で待ち合わせることにした。 日曜日、待ち合わせ場所には早めに到着した。新宿駅は広いので待ち合わせ場所でうまく落ち合えるか心配だった。まあ、携帯があるから連絡はすぐに付くので安心ではある。 娘が選んでくれて気に入っているジャケットを着てきた。少しは歳よりも若く見えるだろう。手には小さめの旅行鞄を持っている。 改札口に到着したが、10時までしばらく時間がある。周りを見渡すと、凜らしき女性が立っている。今日もメガネをかけているが、凛に間違いない。 近づいて「おはよう」と声をかける。凜が驚いたように振り返る。僕と分かって安どの顔を見せる。 「早く着いていたの?」 「駅は広いのでうまく会えるか分からないので早めに来ました」 「今日もメガネなんだ」 「サングラスでは返って目に付くから、これはだてメガネで度が入っていません。コンタクトをしているので、すぐにはずします」 「やっぱり気にしているのか」 「そうでもないけど、用心に越したことないですから」 「すぐにホームへ行こう」
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