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「二人で歩いていると、はたからどう見えるかしら」
「中年男とその愛人?」
「今日はどちらかというと地味な服装にしました。そういうあなたはどちらかというと若いスタイルだから、そうは見えないと思います」
「実際、君は愛人でもないし、普通の交際相手だから、そのような関係にしかに見えないと思うけど」
ホームにはすでにロマンスカーが入っていた。指定の席に着くと凜を窓際に座らせる。まもなく発車した。
この車両は小田原までノンストップだから、発車すれば新たな客は乗車してこないというと、凜はメガネを外した。
そして外をじっと見ている。街並みや住宅街が続く見慣れた東京の風景だ。車内販売が来たのでコーヒーを二つ購入。
「ずっと外を見ているね。考え事でもしている?」
「旅行は久し振りですから、のんびりと外を見ていました。誘っていただいてありがとうございます。私の分の費用は私が払います。そうさせて下さい」
「大体一回分くらいだから、気にしなくても良いけど、君がどうしてもというならそうしてもいい」
「さっき、おっしゃったでしょう、愛人ではないと、だから、なおさらそうさせて下さい。嬉しいんです。まともな女として付き合ってもらって」
「でも下心はあるけどね」
「男は皆そうです」
「まあ、そうかもしれない。でも二人でのんびり過ごしたいと思っている」
「私もです。久しぶりに温泉に浸かってのんびりしたい」
「気楽に行こう、気の向くままにしたい」
僕の肩にもたれて外を見ていると思っていたら、凜は眠っていた。日曜日は自宅でゆっくりしたかったのかもしれない。早起きをさせてしまった。しばらくして目を覚ました。
「眠っていたみたいだけど、早起きさせたからかな」
「いえ、そうじゃなくて、心地よくて眠ってしましました。こうしていると安心するというか」
「それならいいけど、僕もひと眠りさせてもらおうかな」
外の田園風景を見ていたらいつのまにか眠っていた。電車が止まった。二人とも眠っていたみたいだった。
「着いたみたいだね、意外と早く着いた」
「あれからまた眠ってしまいました」
「これだけ眠ったら今夜は眠れないかもしれない」
「それなら夜通しお話ししましょう」
「・・・・」
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