4.箱根への旅(1)

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「恋人同士って、きっとこうしてもたれ合うんじゃないかなと思って」 「もたれ合いたいから、恋人同士なんだと思うけど、きっと」 「それなら、私たちは恋人同士?」 「そこまで言えるといいけどね」 「でもこうしているとなぜかほっとします」 凜は目をつむって僕にもたれかかっている。その湯上りの身体が温かい。 「僕はいつも君に癒されていた。今、君がそういう思いをしているとは妙な気分だけど」 「いつもあなたは私といると癒されると言っていましたが、その気持ち分かるような気がします」 「分かってくれた?」 「今はどうなんですか?」 「癒されるっていうより、少しドキドキしている。好きな娘に身体を預けられてどうしようって」 「いつもと違うの?」 「ああ、ドキドキして緊張している。この後どうしようかと考えているから」 「どうしようって?」 「抱きしめてキスしたい」 凜を抱きしめてキスをした。凜は抱かれてじっとしている。しばらくそのまま凜を抱いていると、温泉の匂いとぬくもりに包まれる。凜の身体の心地よい温かさを感じている。 「今ようやく心が満たされて癒された気持ちになった」 「よかった、そういう気持ちになってもらえて」 今の二人はただ抱き合っているだけでよかった。そのまま二人はうたた寝をしたみたいだった。
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