5.箱根への旅(2)

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ドアのチャイムで気が付いた。夕食の配膳をしてくれると言う。二人はソファーで配膳の様子を見ている。お酒はと聞かれたので、日本酒を頼んだ。 「眠っていたみたいだね。二人は日ごろよっぽど疲れているのかね」 「こんなにのんびりしたのは久しぶりですから、お店ではいつも自然と緊張しているのかしら」 「僕は会社ではいつも緊張している。だから帰ると必ず晩酌をして緊張をほぐしている」 「私も自分一人で切り回しているので、気を使うことは少ないけど、やっぱり、客商売は気を使います」 「たまにはお客になるのも悪くないから、今日はのんびり飲んで食べよう」 「そのために来ましたから」 「自炊しているの」 「もちろんです」 「料理は何が得意なの?」 「お店のメニュー位ならなんとか、お味はいかがでしたか」 「オムライスはおいしかった」 「ほかに作ろうと思えばなんでもできますけど」 「そりゃあ大したもんだ」 「僕は料理と言えば野菜炒めか生姜焼き、カレーライス、シチュウ、肉じゃがくらいかな。娘にいつもレパートリィーが少ないと小言を言われていた。そのうち娘が食べたいものを自分で作るようになったから、それはそれでよかったと思っている」 「私も父子家庭でしたので、中学生のころから自分で食べたいものを作るようになりました」 「それで自然と料理を覚えた?」 「自己流ですが、このごろはネットで調べて作ったりしています。便利になりました」 そんなことを話していたら夕食の準備が整った。食べきれないくらいのご馳走が並んでいる。二人は席へ移って食べ始める。 「作ってもらった料理をのんびり食べるっていいですね」 「ここの料理はおいしい」 「家では料理を作るんですか?」 「いや、仕事で帰りが遅くなることが多いので、弁当や総菜を買って帰ることが多いかな」 「外食はしないんですか?」 「僕はどちらかというと外食はしたくない方なんだ。大体、夕食の時にお酒を飲まないと緊張が解けない。やはり会社でストレスを感じているからかな。だから、外で食事を終えて少し酔いが回って気分のいいところで家まで帰るのが嫌なんだ」 「その気持ち分かります」
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