5.箱根への旅(2)

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「食べてからすぐに横になってのんびりしたいから、弁当や総菜を買って帰って、それを晩酌しながら食べることになる。食べたらすぐに横になってテレビでも見る」 「でも一人で食べるのは味気ないですね」 「誰かと食べるとまたそれはそれで気を使うからね」 「私と食事する時も気を使っていますか?」 「君は特別だから、特に気を使っている」 「いつも気を使っていただいてありがたく思っています」 「でも楽しいからいいんだ」 「やっぱり一人は寂しいですね。私もお店以外では一人でいることが多いから」 「所詮人間は孤独なものさ、そんなことはとうに分かっている。それには慣れた。いや、諦めた」 「強いんですね」 「辛いことに耐えるには一人の方が良いと思っている。二人だと辛さが倍になる。でも楽しい時は二人が良い。楽しさが何倍にもなる」 「優しいんですね。確かに辛いことは愛する人と分かち合いたくないですね」 「一緒にいても、君に負担をかけるつもりはない。ただ、いつもそばにいて楽しい時に一緒に楽しんでくれたらと思っている」 「それはとても楽なことですが、一緒にいる意味がありません。辛い時にお互いに助け合えることが大事だと思いますが」 「君にそこまで求めるつもりはない。でも僕は君の辛い時はいつでも助けるから」 「遠慮しているんですね」 「遠慮じゃなくて、そこまでさせたくないだけだ」 「お付き合いを始めたばかりですから、そう考えるんですね」 「君とは長い付き合いだったけど、身体だけの付き合いだったからかな、でも心はいつも癒されていた」 「身体だけの付き合いでも身体が癒されると、自然と心も癒されるんです。そして身体の繋がりができると情が移るものですよ」 「その情というのが分からない。何なんだろう。男と女には一番大事なもののような気がするけど」 「男女の仲ってそういうものでしょう。難しく考えることないと思います。好きになって、愛し合って、また好きになる。そして絆が強くなっていく。情が移るってそういうことだと思います」
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