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娘の栞が土曜日の午後4時過ぎにマンションに着いた。実家へ帰ってまで食事の支度をしたくないからといって、大阪で買ったという駅弁やたこ焼きやらを持ってきた。夕飯にはそれを当てると言う。駅弁とたこ焼きをつまみに二人でビールを飲む。
「ねえ、その女性ってどんな人、どこで知り合ったの」
「もう7年ぐらい前になるかな、水商売をしていたが、3年位贔屓にしていた」
「真面目なパパが水商売の人と親しくなるなんて意外だわ」
「付き合い出したのは最近のことだ、しばらくどこへ行ったか分からなくなっていたから」
「どういうきっかけで?」
「偶然、彼女の店に入って再会した。それで交際を申し込んだ」
「その人、歳はいくつなの?」
「32歳と言っていた。パパとは13歳も違う。栞より9歳位上」
「随分若い彼女ね、うまくやったね」
「プロポーズしたけど考えさせてと言われている」
「そりゃそうだわ、13も年の離れたおじさんだから、それに娘もいるとなると、考えるわ、振られる可能性もあるかもね」
「どうかな、パパは二度と失いたくないと思っているけど」
「私に会わせたいのはどうして」
「義理の母親になるかもしれないから、栞に気に入ってもらいたいし、できれば仲良くなってくれればいいと思って」
「それは会って見ないと分からないわ」
「そうだね。明日会ってみてあとで感想を教えてくれればいい」
「私が反対したら?」
「反対しないと思っているけど、その時はその時だ」
日曜日の午後6時に銀座のホテルのロビーで待ち合わせをした。僕と栞が待っていると凜が6時前に現れた。
和服を着ている。メガネはかけてこなかった。見た目は32歳よりも上に見えるが、和服が似合っていて周囲も見ているくらいに美しい。こちらへ歩いて来るのを教えると栞が見つめている。
「きれいな人、ママに似ているね」
「パパも会った時にそう思った」
「パパが好きになった訳が分かったわ」
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