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凜が僕たちを見つけて近づいて来た。栞を見ている。
「今日はご招待いただきありがとうございます。こちらが娘さんですね。初めまして寺尾凜です」
「初めまして、山路栞です。父がお世話になっています。今、父と話していたところです。亡くなった母にそっくりだと」
「お父さまもそうおっしゃるんですが、そんなに似ていますか」
「そっくり、なぜか懐かしい気がします」
「じゃあ、話は食事をしながらにしよう」
3人で最上階にあるメインダイニングへ向かう。席に着くとすぐに栞が凜に問いかける。
「父のどこが好きになったんですか」
「栞、最近付き合い始めたばかりだ。そんなこと聞くもんじゃない」
「お付き合いを始めたと言うのは、きらいじゃないからでしょ」
「そうです。嫌いなら付き合いませんし、好意を持っているからです」
「真面目が取り柄の父ですので、どこが気に入られたのか知りたくて」
「お父さまはとても誠実な方です。私のような女に交際したいと申し込んでくれました。すべて承知していると言って、それに私を守ってくれるとまで言ってくれました。これほどまでに私を大事に思ってくれる人は今迄いませんでした」
「凜さんとお話ししていると、なぜ父があなたを好きになったのか分かります。父はあなたといると心が癒されるのでしょう」
「栞さんにそんなことを言われるとは思いませんでした。それはいつもお父さまが言われていることです」
「私もお話ししていると懐かしいような心が癒されるような気がします」
「亡くなられたお母さまに私が似ているからですか」
「そうかもしれませんし、そうでないかもしれません」
「うふふ、やはり親子ですね。お父さまと同じようなお答えです」
「父もそう言ったのですか」
「はい」
娘も僕も正直そこのところは良く分からない。だだ、同じような気持ちなのは確かだ。栞は凛の過去の仕事やどうして知り合ったのかついては聞かなかった。
聞かれれば凜は正直に話しただろう。娘も大人になったということだろう。社会に出て人の機微が分かるようになったのかもしれない。
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