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凜と再会した次の週の水曜日、取引会社での打合せ会議があった。会議は5時で終了した。部下は会社へ戻るというが、僕はこれで直帰することにした。
そして6時過ぎにスナック「凛」に着いた。まだ早い時間だから開いているか分からなかったが、ドアにカギはかかっていなかった。
中に入ると客は誰もいない。凜がカウンターの中で準備をしている。
「もう開いているんだね」
「あら、お早いんですね」
「外で会議があって、直帰すると言ってここへ来た」
「何か召し上がりますか?」
「メニューある」
「どうぞ」
「オムライスをお願いします。これが子供の時から好きでね。それに水割り」
「すぐに作ります」
凜はすぐに水割りを作ってくれて、それからオムライスに取り掛かる。しばらくしてカウンターに運ばれてくる。一口食べてみるが、バターが効いていてとてもおいしくできている。
「お味いかがですか」
「おいしい、まあまあかな」
「まあまあですか?」
「ごめん、まあまあは誉め言葉だ。それで先日の返事を聞きに来た」
「せっかちですね」
「思ったらすぐにやらないと気が済まない性格だからしょうがない、会社でもいやがられているけど」
「お付き合いの申込み、うまくお付き合いできるか分かりませんが、お受けしようかなと思います」
「それはありがたい」
「お付き合いできるのは店が休みの日曜日と祭日だけですけど、よろしいですか」
「こちらも日曜日と祭日は休みだから丁度いい。普通に付き合うなら、それで十分だ。じゃあ、さっそく今度の日曜日にデートしよう。どこへ行きたい?」
「そういわれても、すぐに思い浮かびませんが」
「どこか行ってみたいところとか、何か好きなことはないの?」
「私、絵を描くのが好きなので、じゃあ美術館にでも連れて行ってくれませんか?」
「いいね、調べてメールでもしようか? その後、一緒に食事をしてくれる?」
「はい」
「待ち合わせ場所と時間はあとで連絡するから」
「分かりました。楽しみにしています」
ちょうど話がついたところに二人連れの客が入ってきた。オムライスも食べ終えたので会計を済ませて店を出た。凜の携帯の番号を教えてもらった。
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