2.二人で美術館へ

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どんな気持ちからか分からないが、凜は交際の申し込みを受け入れてくれた。 美術館か、そういえば絵が好きと見えて、店には小さな絵がいくつか飾られていた。誰が書いたのかは分からないが、自然と目に入った。 ネットで美術館を検索して、上野公園の国立西洋美術館のフランスの印象派の絵画展を見に行くことにした。 日曜日の午後3時に美術館の入口で待ち合わせて、絵画展を見たのち、6時から新橋の和食の店で食事をすることにして個室を予約した。 その旨をメールするとすぐに[分かりました。ありがとうございます]の返信が入った。 日曜日の午後3時に美術館の前で待っていると、和服の若い女性が歩いてくる。凛に似ているようだがメガネをかけている。近くへ来て凛だと分かった。 「和服を着てくれたんだ、素敵だね、とても似合っている」 「せっかくお誘いいただいたので、着てみました」 「自分で着られるの?」 「辞めてから昼間に着付けを習いに行っていました」 「目が悪かったの?」 「はい、いつもはコンタクトをしていますが、今日はメガネになりました」 「行こうか」 凜の和服が目に付くのか、周りの人が凜を見ている。彼女は元々細面の美形で身長は155㎝位か、そう小柄でもなくスタイルも悪くない。 ただ、年齢は30歳を過ぎたくらいだから、45歳の僕が連れ立って歩くと、中年男が愛人を連れて歩いているように見えなくもない。 人目を気にしながらもゆっくりと中に入っていく。人気のあるフランスの印象派の絵画展は日曜日とあって結構混んでいた。 凜も嬉しそうで熱心に見ている。僕も印象派の絵は好きだけど、まあ万人が好む絵だ。 「絵を描くのが好きと言ってたけど、店にあった絵はひょっとして君が描いたの?」 「気が付きましたか、パステル画ですが私の絵です。そんなに上手くはないのですが、自分の気に入っているのを何点か飾っています」 「いつごろから書いているの?」 「小学生のころから絵が好きでした。本当はデザイン関係の仕事がしたかったのですが」 「何時描いているの」 「今はウイークデイの昼間とかです。気が向いたらですが」 「今度、店に行ったらしっかり見てみよう」 「ほんの遊びですから」
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