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真っ白なノート
「あれは、見るべきではなかったのではないか。」
一瞬、後悔じみた感情が私の前に踊り出たが、それを覆いかぶさるように恐怖が私の前で停止した。
「あれは今日のことだったのだ」
私は昨日のことを鮮明に思い出した。
私は普通の会社勤めをしているのだがたまに課長に理不尽な仕事を押し付けられ、深夜まで会社にのこることが多々ある。そんなとき私はいつも人が少ない終電を乗って帰る。田舎であり、無人駅である駅のホームは思っていた以上に静かでゆったりとしている。いつもは人がいない電車を一人占めできるのだが、その日は違った。私が電車に乗るときには、いつも最後尾の一番後ろの方に座るのだが、その日は違った。電車に乗り込むと、私がいつも座っている場所に女性が一人座っている。その人の風貌は年齢が二十代後半、若いのだろうが髪が目元まで伸びて暗い服装を着ていた。手には一冊のノートを持っていた。一瞬、地獄からの使者かと思ったがどうやら違うらしい。(そんなことはありえないのだ)
私は少しの間、躊躇したものの、彼女の近くの席に座ることにした。座ると一日の疲れが私の体にどっと押し寄せてきて私は顔をゆがませた。
(仕事もやめどきか…)
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